うでの外側や指先にかけて痛みがでたりしびれる感じがするとき、どういった病気が考えられるでしょう。
症状的に疑われるのは胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)や頸椎(けいつい)ヘルニアです。
整形外科を受診するとレントゲン、もしくはMRIを撮ってもらえるので、診断が受けられます。
胸郭出口症候群と診断された後、処置としてやってもらえるのは湿布や薬のみで悩んだことはないですか?
私の所に来院される方の多くが湿布と痛み止めで対応されたと言う方がほとんどです。
眠れなくなるくらいの痛みや腕をあげたときのだる痛みが続いているあなたに読んで頂きたい記事です。
胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)とは
胸郭出口症候群とは、肩やうでにかけての動かす際に使う筋肉や感覚にかかわる神経や血管の通り道に、なにかしらの問題が起こってしまった状態。
うでや指にしびれや痛み、だるさなどの症状がでる状態をいいます。
胸郭出口症候群になりやすいと言われているのは、なで肩の女性です。
他にも、トレーニングや力仕事などで筋肉を酷使する男性にも多く見られます。
症状としては指先やうでの外側の痛みやしびれるような感覚、握力の低下や感覚が鈍くなってしまうことがあります。
胸郭出口症候群という名前自体があまり認知されていないこともあり、しびれや痛みの症状がでても長い間放置されてしまいがちで、どんどん悪化してしまうことも多いのです。
胸郭出口症候群の原因
胸郭出口症候群は主に姿勢の悪さが原因になります。
胸郭は、胸骨(きょうこつ)、肋骨(ろっこつ)、胸椎(きょうつい:背骨の中でも胸の位置にあるもの)、でできる空間のことをいいます。
胸郭出口は首から伸びる脊髄神経(せきずいしんけい)神経や血管が胸郭を通って、うでに向かう通り道のことをいいます。
そしてその胸郭出口は主に3ヶ所あり、周辺を様々な筋肉が覆う形になっています。
3つの場所それぞれで、神経や血管が圧迫を受けることで痛みやしびれなどの症状がでます。
斜角筋症候群(しゃかくきんしょうこうぐん)
斜角筋(しゃかくきん)という首の付け根から鎖骨にくっついています。
斜角筋は前側と後ろ側に分かれるようなかたちになっています。
その間を鎖骨下動脈(さこつかどうみゃく)鎖骨下静脈(さこつかじょうみゃく)という血管と、腕神経叢(わんしんけいそう)といううでに向かって伸びる神経が通ります。
斜角筋が硬く張ってしまうとこれらが圧迫されて、痛みやしびれなどの神経の症状がでてきます。
肋鎖症候群(ろくさしょうこうぐん)
もう一つは肋鎖間隙(ろくさかんげき)という肋骨と鎖骨の隙間を神経や血管が通る場所です。
先天的な骨の形の問題なのですが、頚肋(けいろく)と呼ばれる骨がある場合、この肋鎖間隙の隙間の幅を狭めてしまうのです。
肋骨は本来なら胸椎(きょうつい)という背中部分の骨から伸びます。
ですがまれにそれが首の骨である頸椎(けいつい)の一番下、第7頸椎から横に伸びる骨が横突起(おうとっき)という部分が余分に伸びてしまって肋骨のようになっている状態です。
長さは人によってことなり、第一肋骨に繋がっているものもあれば、胸骨(胸の真ん中にある骨)に繋がるものもあります。
逆に骨自体はつながるところまで伸びていなくても、骨の先から繊維性の組織が伸びて肋骨にくっついていることもあります。
この頚肋があったり、線維性の組織があると肋鎖間隙の隙間が狭くなりやすいため、肋鎖症候群の症状を引き起こしやすくなります。
女性に多く見られ、右側よりも左側にできることが多いそうです。
大半は無症状なので、気が付かれずに過ごしていることもあります。
これが原因の場合は最悪手術と言う事もあります。
過外転症候群(かがいてんしょうこうぐん)
最後は小胸筋(しょうきょうきん)という、胸の前側につく筋肉と、肩甲骨から前に向かって伸びる骨の烏口突起(うこうとっき)という肩甲骨から出る骨の部分が神経と血管を圧迫して症状がでてきます。
過外転症候群、もしくは小胸筋症候群と言われます。
引用元画像https://xn--3kq2bx53h4sgtw3bx1h.jp/kotsujiko-20335.html
これら3ヶ所で圧迫されて起こる症状を、総称して胸郭出口症候群というのです。
これらが圧迫される原因となるのが姿勢や体の使い方です。
例えば猫背になると、よく言われる肩が前に入る状態にもなります。
そうすると胸郭出口周辺は常に狭く圧迫される形になってしまいます。
この状態が続けば続くほど、筋肉は硬く伸びなくなり、骨の動きは悪く関節も動かなくなっていきます。
たとえ猫背でも、関節自体に柔軟性がある人、筋肉が硬く張りつめていない人、肩やうでの動きを庇うところがある人は、猫背でも胸郭出口症候群の症状はでてこないということもあります。
つまりは姿勢と同様、体の動かし方も胸郭出口症候群の原因となるのです。
一般的な胸郭出口症候群の治療方法
一般的には消炎鎮痛剤、血流改善剤やビタミンB1などの投与も行なわれます。
痛みを改善する為に薬などを処方される事が一番多いです。
これでなるのであればいいと思います。
しかし、この方法で痛みが改善する事が難しいのが正直な所です。
その場合はどれだけ薬を飲んでも変わらないので方法を変える必要があります。
上記で説明をした通り、姿勢や使い方が原因ですのでそこをしっかりと改善する事が大切です。
実際に私がアドバイスをしている方法をストレッチとしてご紹介します。
胸郭出口症候群になったときのストレッチ方法
胸郭出口症候群になったときは、まず胸を開くようなストレッチを行ないましょう。
姿勢をよくすることにもつながります。
肩甲骨を開くストレッチ
立った状態、もしくは椅子に座った状態で行います。
両手を後ろに回し、手を組みます。
後ろに手が伸ばせない、後ろに手を回すと痛い、などがある方は、肘を90度に曲げた状態で体の横に構えましょう。
その状態から左右の肩甲骨同士をくっつけるように肩をそれぞれ後ろに引いていきます。
引いた状態で15秒間維持します。
肘を曲げている方も同様に、左右の肩甲骨同士をくっつけるようなイメージで、背面に動かします。
この時注意してほしいのは、肩に力が入ってしまわないようにすること。
肩に力が入ると肩甲骨の動きはつきません。
肩をすくめるような状態にならないように気を付けましょう。
姿勢を伸ばすストレッチ
立った状態で足を肩幅程度に広げて壁から少し離れるようにしてください。
両手をバンザイにした状態で腰を反らせるように体を伸ばしていきます。
人によりますがお腹の前が伸ばされている、またはうでの裏側、ワキらへんがストレッチされている、どちらかにこの感覚があれば正しくストレッチができています。
1回のストレッチで15秒間程度持続的にストレッチをしましょう。
こちらのストレッチも1日の回数制限はありません。
出来る限り時間を見つけてストレッチを行なっていきましょう。
首のストレッチ
写真のように鎖骨の少し下あたりに手を置きます。
そのまま表面の皮膚をやや下方向に引っ張るようにして下げます。
そしてゆっくりと顔を斜め後ろの方向に向けていきます。
両方とも行なっていきますが、右側の首の前を伸ばすときにはは左斜め後ろに伸ばします。
今度は左側の首を伸ばすときには右斜め後ろに顔を向けるようにしてください。
効果は非常にあるのですが人によっては不快感を感じる方もいらっしゃいます。
無理だけはしないようにしてください。
片側5秒間を目安に、左右均等に3回ずつストレッチをしてください。
小胸筋のストレッチ
小胸筋を直接伸ばすストレッチで、姿勢改善にもつながります。
壁に向かって片側の手を斜め上にあげます。
上げた手を壁についた状態で、体を手をあげた方と反対側に向けて伸ばしていきます。
右手を伸ばす時は右腕を斜め上で壁につけて、体は左側にひねります。
反対に左側を伸ばすときには左腕を斜め上で壁につけて体は右側にひねります。
片側15秒間以上持続的に伸ばし、必ず左右均等に行いましょう。
片側1日3セットずつ行うことで効果があります。
腕立て伏せストレッチ
壁に向かって腕立てをするときのようにして手を大きく開いてください。
足は肩幅程度開いて下さい。
その状態から体を前に大きく倒していきます。
ゆっくり胸を開いて、背面は左右の肩甲骨が真ん中に寄っていくようなイメージです。
顔は右でも左に向いてもどちらに向いていただいてもかまいません。
その状態にして15秒間程度持続的にストレッチしていきます。
伸びるところは両方共の胸の前側がストレッチされていきます。
1日3回を目安に行ないましょう。
胸郭出口症候群になったときにしてはいけないこと
胸郭出口症候群になったときは、まず休息をとりましょう。
筋肉に負担をかけるようなことはできる限り避けるべきです。
胸郭出口症候群になりたての方で「体を動かせばよくなるだろう」と思い込んでトレーニングを強化してしまう場合があります。
絶対にしないで下さい
トレーニングなどは痛みやしびれがなくなるまでの間お休みしていただくのが一番です。
重いものを持つ、という作業が原因なので、力仕事の場合もできる限り避けてほしいです。
うでを上げた状態での作業なども負担となります。
重たいリュックサックなども、両肩の胸郭出口に負担をかけることになるため避けましょう。
猫背のように肩や背中を丸くする姿勢も、胸郭出口を狭くしてしまうことに繋がりますので姿勢も意識しましょう。
胸郭出口症候群のような症状が出ている場合、まずは体を緩めていくことが先決です。
①お風呂に浸かって体を温め、血液循環を良くする
②睡眠時間をしっかり確保して疲れをとる
③ストレッチをして筋肉の緊張を緩める
この3点を意識して改善してください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は胸郭出口症候群についてお話していきました。
慢性的な肩こりがきつくなっただけだと思っていたら胸郭出口症候群だった、ということもある話です。
特に初期の症状は肩こりやうでのだるさなどなので、そのうち治るだろう、と放っておかれやすい症状です。
数年、あるいは数十年単位で蓄積していくものでもありますが、その分痛みやしびれが改善しにくくなってしまいます。
痛みやしびれの感覚を感じたら、まずすぐに近くの病院に異常がないかの確認はしてもらいましょう。
症状の出始めや軽度の場合はストレッチである程度までストレッチや日常で気を付けていくと改善できることもあります。
自分の力で何とも症状が変わらなかったら、そのときは矯正を行う必要がある状態、ということです。
もしこのような胸郭出口症候群の症状でお悩みでしたら、ぜひ一度ひこばえ整骨院にご相談ください。
ひこばえ整骨院胸郭出口症候群に対する治療
ひこばえ整骨院では胸郭出口症候群の治療を非常に得意としています。
悪い部分だけを見るのではなくそれ以外の歩き方や立方体の使い方を全て見て一番最適な治療方法を選んで行きます。
もしあなた胸郭出口症候群による痛み、しびれで悩まれているならば是非下記をご覧ください。
執筆者
ひこばえ整骨院 院長 齋藤 克也(監修)
柔道整復師(国家資格保持者)
業界歴16年。
18歳の頃から整骨院1筋で西宮市で痛みに悩まれている方のお役に立てる様に日々精進中。
2019年に本を出版